2017年06月30日

あなただけの人生の物語

個人的な印象ですが、日本におけるSNSの盛衰で長らく定着していると言えるのは「Twitter」ではありますまいか。

ブログと違い前提として短文で、会話形式で直接的にリアクションできる手軽さに加え、漢字という文字単位で意味を持つ表記言語が、字数制限に対し親和性が高い点も奏功しているのかも知れません。

ただ、SNS弱者の僕はいまだにTwitterの使い方をよく分かっていなくて、ブログのリンクをTwitterに上げるという二度手間チックな使い方くらいしかしてないため、世界と繋がるどころか“ネットぼっち”とでも言うべき隔絶さえ感じるこの頃。

そんなコミュニケーションの壁を乗り越える難しさで大部分が占められた地味なSF映画「メッセージ」を観ました。

笹かまみたいな宇宙船に乗ってきたタコみたいな宇宙人が、スミ噴いて書いた文字の解読に腐心する様に“それぁ、わからねえよ!”と思わずお手上げ気分になりますが、そこは映画なのでちゃんとやってくれます。

実際には同じ文化内にいてもなかなか文字をマスターするのは難しいもので、最近では「うんこ漢字ドリル」なるものが大ヒットしたのもその証左といえましょうや。

過日、某おばちゃんとの世間話にもそんな「うんこ漢字ドリル」が話題にあがり、おばちゃん曰く、自分も子供にウンコで興味をひいて文字を教えたものだと話し始めました。
なるほど昔から子供はウンコ好きなんだなあ、と思って聞いてると

“難しい字は無理よ。「あ」とか「む」とか”

と仰る。

は~そんなもんか、と聞き流しかけるもハタと気付いて反芻してみる。
難しいも何も、平仮名なんか並びでいっぺんに憶えないと却ってややこしいじゃないか!だいたい「あ」の何が難しいというのか?!

と、ここで衝撃の気付きを得る。

“ウンコで書くには難しい”のだと。

つまり、いわゆる尻文字からウンコのインク、言わば“ウンク”を垂らして書いた文字で字を教えていたという事なのか?!

おばちゃん、得々と自らの先見性を主張し続けるも、脳裏に浮かぶその光景に、すっかり意識を持っていかれてまるで心に届きません。

仮にその先見性を発揮できていたとしても、その手法はオリジナル過ぎて誰の心にも届かなかったろうと思いました。  

Posted by チェリー2000 at 20:54Comments(0)SF

2012年09月02日

空想より愛をこめて

日曜なので昼から営業です。
お客さんは少なめですが、坊主じゃないだけまだマシでしょうか。

最近の傾向として、以前に比べるとSF文庫が時々売れるようになりました。
ウチは希少本を扱うタイプの店じゃなく、サンリオとかじゃなく普通にハヤカワの青背中心に、普通の古本価格で出しているので対した金額になるわけではないのですが、個人的なこだわりで文庫棚の半分を使ってるので、動きがあると嬉しいところ。
今日は昔自分で買った「エンダーのゲーム」が売れたし。

特にプレミア物という訳ではないですが、本自体はそこそこ古いものなだけに、絶版になってたり、装丁が変わってたりといった事はしばしばあります。
「エンダーのゲーム」は新装丁で出てると思いますが、ひょっとすると時代の違いから、表現が改訂されている事もあるかもしれません。
いや、海外物は翻訳の問題もあるし、ニッチな需要に合わせて改訂の手間をかける価値はあまりないか。
そういえば海外SFは絶版が増えてるという噂も聞きますし。

絵空事だから無責任でいいって訳にはいかないにしても、脊髄反射的にグレーゾーンのマイノリティを攻撃する世の中ってのも潤い足りないなぁと思うわけです。

とはいえ、いつの世にも騒ぎ立てたい連中の数の暴力みたいなのは無くなりそうもありませんから、下手に戦おうとか思わない方が賢いのかもしれませんね。

首チョンパになっちゃいますしね。  

Posted by チェリー2000 at 21:07Comments(0)SF

2011年03月30日

それでも地球はまわってる

大荷物を処分しつつ、先日仕入れた本の一部を回収。

洋書中心のSF本を紐解きながら眺めます。
SFの文学としてと思弁性などについては十分評価しているつもりですが、それでもSFというジャンルにおいて重要な要素として絵が欠かせないと信じる僕としては、英文は読めなくともこうしたグラフィカルな本を見るのはとてもエキサイティング。
例えて言えば、コスモに浮かぶたった一つのオアシスです。
もしくは阿木 燿子。

その中で目を引いたのがこちらの一冊。
「DREAM MAKERS」





〝SIX FANTASY ARTISIS WORK〟とある通り、6人の画家が描いた超現実系イラストが掲載されているんですが、僕が思わず唸ったのはこのペン画。





ものごっつい描き込み。
しかもこの手の多数のオブジェクトを描き分けるのに、日本で最もポピュラーな漫画のペン画技法ならクロスハッチ(カケアミ、アミナワ)とドット(主にスクリーントーン)などの技法そのものを変えて質感の変化に対応させるくらいだと思いますが、この画像ではわかりにくいですが、ほぼ完全に線の太さと密度のみで描ききっているのです!

これには質感の理解と、それに対応する表現法のバリエーション、なにより積み重ねた自身の技術への信頼がなければできません。

この一枚絵(見開きだから実際は二枚)ひとつでも十分気が遠くなりそうな感じですが、それどころじゃないクンフーの積み上げがその背景に存在することを感じるに、「匠」の文字が脳裏に浮かびます。

近年、道具の進歩でつけペンが使えないプロ漫画家も多いと聞きます。
パースひとつロクに理解してない新人も少なくない、そんな声を聞くこともあります。

まあマンガは絵は上手いに越した事はないくらいで、魅力のひとつでしかないのかもしれません。
しかし前述の通りSFは絵であると僕は思います。

あんがい日本でSFがイマイチ市民権を得ないのは、マンガやアニメみたいなメジャーなところで表現する側に厚みのある絵作りが出来ないからなんじゃないかと言ったら暴言でしょうか。暴言ですね。

生意気を申しました。
  

Posted by チェリー2000 at 22:07Comments(0)SF

2010年09月25日

ツバメが巣を作らない国

いやあ、びっくりしました。

真偽はともかく、領海侵犯した上に巡視船にたいして攻撃行動をした、と判じてお縄にかけた相手をちょっと嫌がらせされた途端、釈放する国があるとは思わなかった。

映画「日本沈没(73)」で、各分野の学者が集まって日本が沈没した場合の日本人がもっとも救われるシミュレートのシナリオを作成した際、全員一致した答えは〝国土と共に滅ぶべし〟でした。
島国という国土を心の拠り所として生きてきた日本人が、国境をはさんでやり合ってきた歴史を持つ諸外国に逃れて、海千山千の他民族の中に入ってもとてもまともに相手にされず、屈辱に耐えて生きることは難しい、ということです。

ディザスター・ストーリーに痛烈な日本人の国民性への批判を巧みに織り込んだ、すばらしいSF作品です。
実際には国土でなく、経済が沈没して弱体化したところに輸入頼みの足元を見られるようになって、映画で危惧したとおりの辛酸を舐めさせられる展開になってしまってるのかな、とか思ったり。

やっぱりSFはいいな、という事で、先日落札したSF文庫を回収してきました。

とりあえずハヤカワの青背のみ。
これだけでも100から150くらいはあるかな。

他に創元のがこの倍くらいはあるので、しばらく困ることは無いかと思われますが、出物があれば買っていってライブラリを充実させるつもりです。  

Posted by チェリー2000 at 00:12Comments(0)SF

2010年07月03日

ソイレントグリーン

いやあ、さすがのオッチャンもご贔屓の雛形あきこがギャレンと熱愛とは気付くまい。
しかし、「仮面ライダー剣」以来、印象を更新できてないとはいえ、地味に頑張ってはったんですな。

そういえば〝嫁ザリ〟も「剣」でてましたっけ。


さて、ギャレン橘に引けを取らぬ地道な日々を送るぷれこぐ堂、今日は雨の一日です。

最近は開店時から雨が降ってるときは、店の前に出している百均コーナーを出さないままにしています。
わざわざビニール被せて出しても気を使うし、傘さしながらじゃお客さんも見難いしだけだし。

まあ僕が楽なのが一番の理由かも知れんです。エゴですな。
人間、自分の心地良さを犠牲にするのは、なかなか難しいようです。


ある意味話題の映画「ザ・コーブ」が日本でも上映され、これまたちょっとした話題になっているようです。

個人的見地としては「特に固執する必要が無い伝統・文化を守る」というエゴと、「感情移入できる生物に対する保護欲を満たしたい」というエゴの対立というアングルから、チラ見で見守っています。

どちらももっともらしい理屈をこねてますが、ようは自分の価値観を曲げたくないだけのような気もしなくはない。

ちなみに「ザ・コーブ」はイルカ漁の話ですが、イルカと鯨は線引きが割と適当みたいです。

ということで、今回は捕鯨に関するアーサー・C・クラークの作品「海底牧場」を紹介。
人口増加による食料対策の本丸として、鯨を家畜として繁殖しようという計画が本作のアイデアの骨子となっております。

実際にこのアイデアを来るべき食糧危機の解決策といってる人たちも居ます。

近年、捕鯨が制限されたために鯨の数は増えてきてるそうで、海の食物連鎖の頂点と言える鯨が増えることで、海洋生物の生態系が狂ってきていると言う説もあるとか。

この辺のデータは、それぞれの立場によって湾曲されてないとも言えないので、なんにしても僕は特に是非を問おうとは思ってませんが、現代社会で、しかも先進国で生きる僕らは、生活の利便性の為にあちこちで紛争の種をまいてるのと同じですから、鯨どころか人肉を食ってるようなものではないでしょうか。

ちなみに僕の子供の頃はまだ鯨は安い肉で、「ベーコン」といえば鯨肉でした。
僕はコロのおでんが特に好きでした。  

Posted by チェリー2000 at 23:19Comments(0)SF

2010年06月21日

がんばれ、カウボーイ

新たに拡充した文庫棚。
片面は普通のミステリーとかの文庫で、もう片面にジャンル系の文庫を中心に埋めています。

けっこう頑張っているのですが、なかなかSF系作品が集まりにくいので、ここはひとつ自分の蔵書を切り崩してしまおうと本棚から下ろして値付けをせんと、一応アマゾンをチェックしてみる。

只でさえ少ないSF本をわざわざアマゾンの価格競争に放り込む意味なんか全くありませんので、調べるだけ無駄な気もしますが、まともな値段なら出さないでもないですし、なにより世間的にいくら位の物なのか単純に気になるから、つい調べてしまうのです。

〝「なんでも鑑定団」に親父の形見を持って行く〟の心理だとご理解ください。

と、異変に気付きました。
妙に高いのです。

もちろん物にもよりますが、特にウィリアム・ギブスン系が高い。

どうやらハヤカワの青背で、すでに重版していない物がけっこうあるみたいなのです。

とくに読み直すわけじゃないし、見たくなったらまた買えばいいだろう、などと考えての切り崩しだったのですが、こうなると話が違います。

僕のSFファンとしてのキャリアは、映画「ブレードランナー」からなのですが、その当時「BR」はそのビジュアルイメージから誤解され、サイバーパンクに分類されていました。

そんな事とはつゆ知らず、僕は勘違いサイバーパンカーとして、SFファンの中でも更に狭いカテゴリーに傾倒していった後、幅を広げていったのでした。

そんな僕としては、この「ニューロマンサー」「カウント・ゼロ」「モナリザ・オーヴァドライブ」のスプロール三部作はちょっと特別な思い入れもありますので、重版がかかるまで持っておくことにします。
「クローム襲撃」もついでに。


これは市会で出てたらマストバイですな。どっちにしても買うだろうけれど。  

Posted by チェリー2000 at 22:14Comments(0)SF

2010年06月13日

《豚》もしくは《もぐら》

今日は雨の日曜日。
うっかり目覚ましをかけ忘れて、(いくらなんでも遅くないか?)と時計をみたらとっくにお昼をまわってました。
ありゃ!と思うも、外は激しい雨。
こんな天気でお客さんが入ってきたためしがありませんので、この際、雨脚が弱まってから開けたろうかしらんなどと思うも、とりあえず照明をつけてシャッターを上げ、いちおう営業状態に。

案の定、お客はありませんが、やることはいっぱいあるし、忙しいに違いないのだから、たまにはいいか、と。

そんなわけで、山下達郎「サンデーソングブック」の、忙しくなると音源を自宅の棚から適当にピックアップしてかけるコーナー「棚から一掴み」に習って、本のご紹介でお茶を濁したいと思います。

安部公房 「方舟さくら丸」

主人公は坑道にいずれ滅ぶ世界から生き残るためのアジトを築き上げ、そこに招き入れる乗組員を探して「乗船許可証」を持って、人を値踏みしている男。
奇妙な昆虫標本を売る男とかかわり、なしくずしに数人の乗組員を迎えることになった事から、方舟計画は予想外の方向に展開して行きます。

この主人公、世の中見切った気になって、自分が賢く生き残る新世紀のリーダーを気取って世間を睥睨してるつもりなのですが、完全に中二病こじらせまくった引きこもりのデブチンです。

その点は〝《豚》もしくは《もぐら》〟というあだ名で呼ばれていて、そう呼ぶ知り合いと顔を合わさないようにしてるあたりに、自覚もうかがえます。

なめられまいと振舞うも、世慣れてないのが丸出しで、山師どもにいいように流されるしまつ。
まったくもってダメダメ君なのです。

そこにくわえて、自分のアジトのつもりが、他に巣くってる「不良中学生」たちや「ほうき隊」なる老人組織に侵略を受けたりします。

特にこの「ほうき隊」が恐ろしくて、中学生たちを手下にせんと狩り出し、とりわけ女子中学生狩りに燃えて坑道内を跳梁跋扈いたします。
いわく「雌餓鬼」を捕まえて「若い方が面白い、濡れた紙をあぶって火が付くまでが楽しみ」と例える行為に及ぼうというわけです。
もっと直接的に自分達をして「女をはらませる能力に遜色なし」とも言ってます。

なにしろ外の世界が滅んだら、子孫を残さにゃ意味が無いとの大義名分を振りかざすからたちが悪い。
密閉空間で、十数人の女子中学生が、数十人の老人によって…エグイ設定だ…。

都知事!
この本はやっぱり焚書ですか!?


安部公房というと「箱男」くらいしか知らなかった僕が、じつはSF、もしくは境界線上の形而上学的作品を多く書いている作家だと気付いて、ちょこちょこ読み出した中でお気に入りのひとつです。

「厭人癖の引きこもりダメダメ中二病患者の冒険譚」と聞いて興味を感じる方は、是非一読。  

Posted by チェリー2000 at 18:11Comments(2)SF