2011年06月12日

黒い家

本のご紹介。

今回は「消された一家」

北九州で実際に起きた、一家三世代+αが犠牲となった驚異の大量殺人事件のルポルタージュです。

日本における大量殺人といえば、「八つ墓村」のモデルとなった事でも有名な津山30人殺しで、まるでFPSでもやってるが如く次々に〝クリア〟していく様はまるでゲーム的である種の疾走感があり、現実離れしています。

しかしこの北九州の事件では、そんな物は微塵もありません。
それどころか、この主犯とも言えるであろう松永太なる人物は、実際の殺人および遺体損壊・遺棄には一切手を下していなというから驚異的。

とにかく天才的に口八丁手八丁で人をコントロールしてしまうのですが、冷静に読んでる側としては〝なんでこんなんに簡単にはめられるんだろう〟と、まるで納得できず、されど現実に起こった事件で何人も無残に死んでるんだから納得するしかないという、奇妙な気分で読み進めることになります。

またこの松永、サディストであることは間違いなさそうですが、初期段階では殺人自体は望んでなかった感もあります。
とにかく拷問し、服従させる事に喜びを感じている、そんな感じ。

なので、最初の頃は回復、蘇生を試みたりしています。
が、もちろん発覚しないことを最優先させるので、異常を認めても医者に駆け込んだりはしないので、未必の殺意ってやつでしょうか。
そもそも本来の目的は金ヅルで、金がなくなれば単なる足手まといでしかなかったから、さっさと切り捨てたかったんだろうけれど、やり過ぎて抜き差しならなくなった感が強い。
松永にしてみれば、本当に〝迷惑をかけられている〟状態だと思ってたかもしれません。

この事件は10人くらいの人間が密室で、見事に隠蔽されながら行われた不可解なもので、状況によってはコントかと思うようなツッコミどころがあります。

例えば〝ちゃんと身内で始末付けといて〟とザックリした指示を与え、やむなく殺した所に来て〝なんてことをしたんだ!〟と慌ててみせ、死体を確認後もう一度〝なんてことをしたんだ!〟とまるで「カリオストロの城」ラストあたりの銭形警部なみに白々しく慌ててみせたそうです。

実際それを見て〝わざとらしいなあ〟ってツッ込んでたとか。

惨劇のさなかだけに、妙にコミカルに感じてしまうエピソードでした。

が。
そのツッコミも事態の改善に向くことはなく、あげく幼い子供に因果を含めて殺されることを認めさせる辺りになると、その悪魔的な所業に暗澹たる気分になります。

とにかくこの話のおっかないのは、あと一歩で完全犯罪になりそうだった事と、法廷で道化のように無実の演説をぶつ松永の心のからっぽさ加減。
僕がこの手の話が好きなのは、犯人の特殊な思考回路、心の闇を知る事への純粋な野次馬根性なんですが、この松永には嘘で固めた殻の中は何もないんじゃないかという気がします。

そしてそんなモンスターに出くわしたとき、果たして自分は正気を保てるのかという不安。

最高に嫌な気分になること請け合いの一冊ですが、危機管理意識を鍛える意味でお薦め。  

Posted by チェリー2000 at 19:41Comments(2)古本屋