2013年09月08日

わるいやつら

夜中にジムに向かう途中、職質を受ける。
豊崎のタコ公園で起こった通り魔殺人未遂事件の聞き込みで、近い時間帯に通りがかる人から情報を集めようという事でしょう。

あいにく何の情報もないんですが、あきらかに正気でない凶行だけに早い解決をお願いしたいので、なるべく協力的な姿勢ではいます。
しかしなんで住所・氏名・電話番号・生年月日までの超個人情報を聴取されるのかは疑問。


人間、理想は自らを律して秩序を成したい物ですが、現状「悪事は引き合わない」というのが秩序を守る上での大前提であると言わざるを得ません。
しかし本当にその大前提が守られているかどうか、認識されている以外の犯罪がどれだけあるかさえ定かでないし、ただでさえ検挙率は下がってると聞きます。
世の中便利になって、我々一人ひとりがある意味で超能力と呼べるほどのパフォーマンスを発揮するようになったので、捕まえるのも、発見されるのも、どんどん難しくなっているだろうことは想像に難くありません。


〝難しいどこじゃない、むしろとっくに世界は悪党に支配されてるよ!〟という絶望の世界を描いた作品、マーク・ミラー「WANTED」が入荷。
〝WANTED〟といってもアラブの大富豪とかニヒルな渡り鳥とは関係ない、いわゆるアメコミです。

アンジィで映画化もされてるんですが未見。内容もまったく知らない点では同じミラーの「KICK-ASS」以上に距離がある作品でしたが、こちらもいわゆる全身タイツもの。
ただしタイツヒーローはほぼ出ません。なぜならこの世界ではヒーローは悪人軍団との全面戦争に敗北し、人々の記憶からも消え去りマンガの中にその痕跡を残すのみとなってしまったから。

なのでお話は悪人軍団のハト派とタカ派の派閥抗争にカタギの世界からやって来た二代目が大奮闘する、といった展開になります。

「KICK-ASS」同様にバイオレントでノワールな作風は良識派の眉をひそめさせてやまないと思いますが、この辺はエンタテインメントとしてあくまでサービスだと思われます。
けっきょく普通の人は権力に隷属するしかないという皮肉をぶちまけつつ、転じてみればそんな世の中でそんなにあくせくしたって仕方ないぞと、それぞれの身の丈で生きたほうがいいぞ的な、老子にも通じるメッセージを見出せなくも無いが気のせいか。

作中では悪の秘密結社が世界を牛耳っているので何をやっても咎められないのですが、それでも警察がいて活動してるって事は、悪人が幅を利かせてるんじゃなくて、超人だから手が出せないと言ったほうが正確かもしれません。
そう考えると正義の超人が幅を利かせることもある意味では同様かもしれず、藤子・F・不二夫「ウルトラ・スーパー・デラックスマン」は最終的に暴君でしたが、それ程でないにしてもモラル・ハラスメントに怯えることになりそうな気もします。

この作品、読者も巻き込んだメタフィクションの体裁を取っていますが、消えたヒーローがマンガの中だけで語られるのと同様にこの悪漢譚自体もマンガであることを考えると、我々の世界においてはどっちも存在しないと言う事になるのかも知れません。

他にも次元を股にかけてパラレルワールドを騒がせているみたいなんですが、ヒーローが牛耳ってる次元もあって、あまり表立って非道を行うとそのヒーロー軍団に目を付けられるんじゃないかと危惧してたりして、構造的にしっくりこない(しかも別にいらない)設定が盛り込まれてますが、細かい事はこのさい気にしない。

過激な描写と過激なメッセージ、でも陰湿さは無くむしろユーモアと爽快感さえ感じました。
映画のほうはだいぶ違うみたいですが、そのうち観てみようと思います。  

Posted by チェリー2000 at 21:22Comments(0)マンガ