2010年06月13日

《豚》もしくは《もぐら》

今日は雨の日曜日。
うっかり目覚ましをかけ忘れて、(いくらなんでも遅くないか?)と時計をみたらとっくにお昼をまわってました。
ありゃ!と思うも、外は激しい雨。
こんな天気でお客さんが入ってきたためしがありませんので、この際、雨脚が弱まってから開けたろうかしらんなどと思うも、とりあえず照明をつけてシャッターを上げ、いちおう営業状態に。

案の定、お客はありませんが、やることはいっぱいあるし、忙しいに違いないのだから、たまにはいいか、と。

そんなわけで、山下達郎「サンデーソングブック」の、忙しくなると音源を自宅の棚から適当にピックアップしてかけるコーナー「棚から一掴み」に習って、本のご紹介でお茶を濁したいと思います。

安部公房 「方舟さくら丸」

主人公は坑道にいずれ滅ぶ世界から生き残るためのアジトを築き上げ、そこに招き入れる乗組員を探して「乗船許可証」を持って、人を値踏みしている男。
奇妙な昆虫標本を売る男とかかわり、なしくずしに数人の乗組員を迎えることになった事から、方舟計画は予想外の方向に展開して行きます。

この主人公、世の中見切った気になって、自分が賢く生き残る新世紀のリーダーを気取って世間を睥睨してるつもりなのですが、完全に中二病こじらせまくった引きこもりのデブチンです。

その点は〝《豚》もしくは《もぐら》〟というあだ名で呼ばれていて、そう呼ぶ知り合いと顔を合わさないようにしてるあたりに、自覚もうかがえます。

なめられまいと振舞うも、世慣れてないのが丸出しで、山師どもにいいように流されるしまつ。
まったくもってダメダメ君なのです。

そこにくわえて、自分のアジトのつもりが、他に巣くってる「不良中学生」たちや「ほうき隊」なる老人組織に侵略を受けたりします。

特にこの「ほうき隊」が恐ろしくて、中学生たちを手下にせんと狩り出し、とりわけ女子中学生狩りに燃えて坑道内を跳梁跋扈いたします。
いわく「雌餓鬼」を捕まえて「若い方が面白い、濡れた紙をあぶって火が付くまでが楽しみ」と例える行為に及ぼうというわけです。
もっと直接的に自分達をして「女をはらませる能力に遜色なし」とも言ってます。

なにしろ外の世界が滅んだら、子孫を残さにゃ意味が無いとの大義名分を振りかざすからたちが悪い。
密閉空間で、十数人の女子中学生が、数十人の老人によって…エグイ設定だ…。

都知事!
この本はやっぱり焚書ですか!?


安部公房というと「箱男」くらいしか知らなかった僕が、じつはSF、もしくは境界線上の形而上学的作品を多く書いている作家だと気付いて、ちょこちょこ読み出した中でお気に入りのひとつです。

「厭人癖の引きこもりダメダメ中二病患者の冒険譚」と聞いて興味を感じる方は、是非一読。

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Posted by チェリー2000 at 18:11│Comments(2)SF
この記事へのコメント
AB攻防さんは小島秀雄さんが最も影響を受けたと公言する作家さんの一人だそうです(笑)
Posted by ユン票 at 2010年06月14日 10:32
マジですか?
影響の跡形も無いじゃないですか。

もういっぺん読み直して、アイロニーとエスプリを注入し直したほうがいいですよ、コジマ監督。
Posted by チェリー2000チェリー2000 at 2010年06月14日 20:35
 
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