2015年03月11日

コンガラ・コネクション

ボードゲームの一種にテーブルトークRPGという知る人ぞ知るジャンルがあります。
ゲームによって変わりますが、基本的に紙に書いたキャラクター・シート一枚とサイコロを持って物語を司るゲームマスターと対話しながら進めていく、なにより想像力と協調性を必要とするストイックな遊びです。

僕はゲームと名の付くものは大抵好きなんですが、コレに関しては心得た人材が複数名揃わないといけないハードルが高くて、中学の一時期しかやれませんでした。

なかでも僕がマスターをやったのは僅かで、その際に僕はインテリジェントアイテムを登場させ、プレイヤーがシナリオ通りに進めない時にコイツに口を挟ませて軌道修正するという“手際の悪い新人の仕事を横から自分でやってしまうベテラン”的な、最低のマスタリングで場をシラケさせた事がありました。


今回のいまさら映画鑑賞会は、そんな僕の大昔のプチ・トラウマを思い出させる為に作られた映画

「her/世界でひとつの彼女」
コンガラ・コネクション

スパイク・ジョーンズ監督のSF作品です。

別居中の嫁と離婚秒読み状態ながら未練を引きずる中年ヒゲ男が、導入した学習型の新OSに人格を感じ愛し合いはじめるという、一見するとアニメキャラに恋する現実逃避負け犬オヤジ的な話のようですが、まったく異なります。

第一にこのヒゲは別居嫁に対して苦悩しながらも個人として向かい合い、嫁のいない寂しさを別の交際で紛らわそうとするくらいには社交性も行動力もある。
「代筆屋」というけったいな仕事をやってるだけあってナイーブなタイプで、一番近い存在が女友達と少々ゲイっぽくはあるけれど、けっして引きこもり的な社会生活不適合者ではないことを丁寧に描いているのは、観客に“普通じゃない人間のこじらせ系の話”で逃げられないようにするためでしょう。

これは誰にでも通じる普遍的な「愛」や「人間性」や「倫理」やら「自我」やら、諸々についての形而上学的思索を、恋愛ドラマを縦糸に思弁的に問いかけた、実にSF的な映画だと思いました。

映像面もガジェットにはかなり未来的な要素があるものの、ほとんどは現代の風景そのままロケで使っていると思われ、それでいて齟齬のないくらいに適度に非現実的な生活感とセットデザインが十分に未来的な画面を構成しているのが上手い。
まったりした展開を画面持ちさせる意図か、なんとなくまったり見ていたい気分にさせられる心地良さがある。

やがて多くを学び成長した人工知能との間にズレが生じて来てしまうのですが、そもそもOSだった事を思い出すと、勝手に別のことしたり、言うとおりに動かなかったり、強引な提案や説教してきたりするのって道具としては失敗だよな、とまたトラウマうずいてズキズキやらしみじみやら。

最近は中国資本が入りまくった結果、SF映画というと中国市場向けのド派手なアトラクション映画ばかりになりがちな昨今、こういう作品が出てきた事自体がかなり驚きかもしれません。
まあそこまでの予算はいらなかったのかも知れませんが。

このOSの声を吹き替えてたのが林原めぐみで、最初は機械らしく非常に落ち着いたトーンだったので気付かないくらいだったんですが、テンション高めになると途端に右斜40度の角度で顔を出してきてちょっと現実に引き戻されてしまうのが残念。
宮﨑駿じゃないけれど、色が付きすぎた声優さんはどうも雑味が出ますね。

これはヨハンソンの声でもう一度見直すべきでしょう。

5段階で5。

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Posted by チェリー2000 at 23:26│Comments(0)映画
 
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